研究概要

研究の背景

 湖沼や内湾などの閉鎖性水域の富栄養化対策としての総量規制や湖沼保全計画に基づき、家庭や工場等の特定汚染源からの発生負荷量は削減されている ものの、わが国の内湾や湖沼の栄養塩濃度は依然低下していない状況にある。この原因として、非特定汚染源(ノンポイント汚染源、面源)からの発生 負荷量が正確に評価されておらず、実際には非特定汚染源からの流出負荷の比率が高く、それが減少していない、あるいは増加しているため、特定汚染 源からの負荷の削減が、対象となる内湾や湖沼への実際の流入負荷の削減に結びついていないことが指摘されている。現在用いられている原単位は、特 に、東京湾・伊勢湾・瀬戸内海の総量規制で用いられている値は、1980年の開始時からほとんど変更されておらず、その後の非特定汚染源からの流 出負荷の変化や降雨時に多量に流出するという研究成果等が反映されていない。このため、最新の研究成果に基づき、非特定汚染源からの流出負荷量に ついて再検討を行い、実態を反映した推定手法に改める時期に来ている。

研究の目的・最終目標

 本研究では、非特定汚染源からの汚濁負荷量を適正に把握・評価し、湖沼・内湾への全流入負荷量に対する非特定汚染源の位置づけを、最新の科学的知見をもとに明確にする非特定汚染源の市街地、農地、森林に分けて各非特定汚染源からの有機汚濁物質、富栄養化要因物質の窒素、リン等の流出に関する文献や観測データの収集し、収集したデータの流域情報と負荷量に関するデータベースを作成するとともに、原卖位に関する考え方について整理し、新しい原卖位の推定手法の提案を行うことを目的としている。

研究の方法

 市街地、農地、森林の流出負荷量や原卖位と、それらに関連する流域や水文条件等の情報を学術論文や研究機関等の調査報告書等から収集しデータベースを作成する。同時に、大気降下物による負荷についても同様に情報を収集し、データベースを作成する。更に既往の文献と今回得られた情報、整理したデータベースから、非特定汚染源の原単位の考え方や課題を検討し、これまでの原卖位の算定手法や水域管理における原卖位法の適用の現状と課題について明らかにし、非特定汚染原制御に関する現実的な方法論について検討する。具体的には、原単位の定義と歴史、実測値からの原単位の算出方法および算出根拠、面源にかかる原単位の利用方法・使われ方、現状の問題点と課題、これからの原単位のあり方、についてそれぞれ検討する。